雑居ビルの3階にその店はあった。
一歩踏み入れた瞬間、独特のにおいが鼻をつく。
店内には2台の空気清浄機とアロマ加湿器が稼働していたが、あまり効果はないようだ。
ミラーボールが回転しながらぎらぎらと店内の壁を順に照らしていく。
狭い店内に強引に敷き詰められたボックス席のひとつひとつには番号が振られていて、3番のブースに案内された。
入り口に近い位置のそこはボーイの監視の目がきついが、新人や、店が大切に育てようとしている研修中の有望株が割り振られる可能性がぐっと上がる。
座面が地面スレスレのフラットシートであぐらをかきながら胸を高鳴らせていると、視界にすらっとした生足が現れる。
視線を順に上へとたどっていく。
太ももをくすぐるように繊細なレースが揺れていた。
そういえば、ブースの壁面にポスターが貼られていた。
──コスプレイベント。衣装、ベビードール。
レースの下にはフリルが覗いており、パンティもベビードールに合わせてフリルのついたものをつけていた。
さらに視線を上げるとベビードールの薄い布地の下にぷっくりと乳輪の盛り上がった美味しそうな乳首が見える。
乳首に目を奪われていると、「はじめまして」と声がかかる。
「ナオです」
店内のBGMに溶けてしまいそうな小さめの声。ナオと名乗った彼と目が合う。
彼──そう、ここは男のコが接客をしてくれる風俗店だ。
スリッパを脱いでするりとブースへ踏み入れてくる。Tバックの下着が恥ずかしいのか、そっと左手でお尻の下にレースの裾を巻き込むようにして座る。
「入ったばかりで不慣れですが、よろしくお願いします」
たどたどしくそう言った彼は次にどうすべきか逡巡しているようだ。二人して黙っていると、店内のユーロビートに紛れて隣のブースの楽しげな会話や、どこかのブースの喘ぎ声が聞こえてくる。
よろしくね、と声をかけてからそっと抱き寄せてみる。
拒絶する素振りがないのを確認してからキスをする。意外にも簡単に口を開いてくれた。
遠慮なく舌を絡める。「んふ……」と彼の鼻息がかかる。こちらは目を開けたままだったので、彼が必死に目を閉じながら接吻に応えているのが見えて興奮した。小さな口から懸命に舌を出してくれる。積極的なキスだ。唇を執拗に吸ってやると、うすく小ぶりな彼の唇が赤く腫れた。
キスだけでもじゅうぶん盛り上がっているようだが、せっかくなので先ほどの美味しそうだった乳首も堪能させていただこう。
さらに彼を引き寄せて膝の上に乗せる。160センチ台であろう小柄な彼は、見た目からの予想通り膝に乗せてもあまり重くなかった。
対面で跨がる彼に再びキス。今度は最初から舌を絡める。
胸元が大きく開いたベビードールはいとも簡単に乳首へアクセスできた。
両手で乳輪をなぞり、舌を捩じ込みながら乳首を摘み上げると眉を寄せて感じているのが見えた。
薄暗い店内でも彼の頬が紅潮しているのがわかった。
色が判別しづらいので乳首がピンク色かどうかが確かめられないのが残念だ。
乳首をいじっていると、彼も客にされるがままではいけないと思ったのか、こちらのベルトに手をかけてくる。
慣れない手つきでベルトを外す彼を一旦膝から下ろし、ズボンを脱いでしまう。
下着は彼が脱がせてくれた。

舐めてと頼むまでもなく、うっとりとした目でこちらの勃起したものを見つめるや、頬を寄せて肉茎にキスしてチュウチュウと吸い付いてくる。
これ、好きなの?と問うと「しゅき……」と茎に唇をつけたまま答えた。
愛おしそうに鼻をくっつけて匂いを嗅いだあと、いきなり口に頬張った。
そういえば、オシボリの入ったカゴを持ってきていたのに、使っていない。
フェラチオは得意ではないようで、小さな口いっぱいに咥え込んだかと思うと、苦悶の表情を浮かべて口を離してしまうのを繰り返す。根本まで咥え込むのは無理だと判断したのか、今度はぺろぺろと亀頭を舐め回したり、括れを舌でなぞったり、色々な角度から味わうように舌を使う。
舐める動作に合わせて無防備な背中と尻が揺れていた。
がら空きの背中を指先でなぞると「んん……」と喘ぎ声が漏れた。
そのまま背骨を下へたどっていく。
Tバックの下着が食い込むそこへ指を伸ばす。
面積の小さな布は指一本で隠すべき場所をあらわにできてしまう。
指でそこをなぞると腰を振って応えた。第一関節まで入れてみる。くぐもった声が漏れた。ゼリー状のローションが仕込んであるようで、そこは簡単に指を受け入れてくれる。さらに指を深く差し入れ、軽く前後させるとフェラチオが止まった。指を増やしてやる。ボタ、と彼の先走りがシートに水滴を作った。
指を抜くと、彼が体を起こしてブースの壁に手をついた。
「ください……」
か細い声で懇願しながら尻を突き出す。
いいの?と確認すると、恥じらいながら頷いた。
先ほどまで指を受け入れていた箇所に先端を宛てがうと、腰を捩っておねだりしてくる。
腰を掴んで貫いた。
「あっ……!」
挿れたまま動かずしばらくナカの温度を味わう。
彼が焦れたように尻を振る。イイトコロに当たったようで、「あんっ」と喘ぎがこぼれる。
腰を掴んでゆっくりと出し入れしてやる。彼の濡れた唇からはふうふうと甘い吐息が漏れていた。
壁についていた手を取り、腕を掴んで腰を打ちつけた。皮膚のぶつかる乾いた音が狭いブースに響いた。
「あっあっ」
律動に合わせて押し出されるように声が漏れる。
掻き出されては押し込まれを繰り返したローションが粘度を増してぐちゃぐちゃと音をたてて糸を引く。
「あっあ……はぁっ……あぁっ……!」
喘ぎ声が一際大きく響く。
こちらを振り向かせてキスしたかったがその余裕もなさそうだ。
腰を打ちつけるように奥を突くと、内腿がぶるぶると痙攣して内股気味になる。尻肉もぷるぷると震え、こちらを受け入れている箇所もひくひくと呼吸するように蠢いていた。
「あっ……はぁっ……ぁ」
半開きの口から喘ぎが漏れる。うっとりと快感に浸る彼を視界に捉えながら、腰を掴んで激しく出し入れすると、もう自分の体を支えていられなくなった彼がぐったりと腹這いになった。
捧げ物のように高々と突き出された尻へたっぷりと注いでやる。残滓を尻に塗りつけると、嬉しそうに腰を振り、微笑みながら振り返った。